無駄です、イカレ帽子屋。視ればわかるでしょう。
「レイム」
レイム。 返事をしなさい。 私はもう、見えないのだから。
彼に触れたかった。 あの優しい手の温度に触れたかった。
なのに彼がこの部屋の何処にいるかわからなくて、私はその場に立ちすくんだ。
―――無駄です、イカレ帽子屋。
私は、また、守れなかったというのか。
―――無駄です。
目眩がした。
レイム。ねぇ、レイム。
どうして私は、気をつけての一言さえなく君を見送ったのだろう。
ライアー
(わたしもまにあわなかったけれど)
(きみ、あのこを泣かせたくはないんじゃあ、ありませんでしたか)