お前は器用なくせになんだってこんなことができないんだ、なあザクス。そういった彼のあきれかえった顔は忘れようとしたってそうそうできるものではなかった。いいか、ほら、指はこう、腕は伸ばして、肩はこのくらいの高さで、まっすぐ構えて、そら、撃ってみろ。彼に支えられたままの格好で引き金を引くが、鉛玉は、すこし離れた場所に立つ的とは検討違いの方向に飛んでいく。


「……お前」
「これでも真面目にやってますよ」


二発、三発。続けて打ち出された弾丸も初弾にならい、彼の指導もむなしく的をはずす。それからいくらかして、へたくそ。ぼそりと呟かれた言葉に、わたしは知らん顔をして彼の爪先を思いきり踏みつけてやった。



・・・



押しあてたくろがねのつめたさに、彼は身震いしたようだった。ねえレイムさん、ねえ。君が避けないって、私、知っているんです。彼がちいさく喉奥を鳴らすのが聞こえ、そっちじゃあないぞと、私の両手を拳銃ごと包むようにしてただしい急所に移した。


お前は当てられないよ。


たとえ目が見えていても、お前の銃が当たるわけがないだろう、馬鹿ザクス。わらう彼の喉元にむけて、がちゃん。引き金はかるく、熱を持つこともない。それはただただ私のさびしさを乗せた、みじめな空砲であった。





カタコンべ



(死にかけ詐欺師と墓標のおはなし)

 

 

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